竜理長 Interview

ファースト・アルバムを制作した竜理長のメンバー3人に話を聞いてみました。

熟練した3人ならではのイマジネーションあふれるプレイと、
次々と新しいアイデアが出てくるそのコンビネーションは、
今後さらに素晴らしいライブや作品を生みだすに違いありません。
竜理長
髙橋竜×三柴理×長谷川浩二
  髙橋竜(竜)、三柴理(理)、長谷川浩二(長)、三者三様の音楽ルーツ


最初に伺いたいのですが、
それぞれ一番影響を受けたミュージシャンは?


ビートルズのポール・マッカートニー。小、中学生のころ「デイ・トリッパー」を聴いて。
最初はピアノを弾いていました。ベースは中学の時にバンドをやり始めてからですね。



僕はレオポルド・ストコフスキーという指揮者に影響を受けました。
小学生のときに『ファンタジア』という映画を見て、その音楽からこの指揮者に注目し、
中学からクラシックオタクになりました。













4歳上の兄が聴いている曲から影響を受けたので、ベンチャーズモンキーズから始まって、
ビートルズディープ・パープルクイーンレッド・ツェッペリンとか。
兄はギターを弾いていましたが、両親も音楽好きで。
父親はポール・モーリアとかを家で聴いていました。全てに影響を受けて、特にこの人というのはなかったです。
友人とミュージシャンで誰が好きか?というハナシになっても特にいなくて、どの曲が好きと答えていたけれど、
高校のころになってスティーブ・ガッドが好きだということに気付きました。
ただロックが好きっていう感じ?それから80年代に入ってカシオペアをはじめフュージョンとかが流行って、
一緒にプレイしていた兄のバンドでもそういった曲のコピーをするようになったので、
僕もサンバのキックを練習するようになって、そういう意味では神保彰さんの影響を受けているとも言えます。
のちに兄はそのバンドから抜けてしまいましたが、
僕はそこのリードギターの人と一緒にバンド活動をTHE ALFEEに入るまでしていました。
オリジナルのほか、四人囃子の『一触即発』とかでイーストウェストに出て、準優勝をもらったりしていました。
14歳の天才ドラマーとかって記事になったりして。
みんなはそういうロックの王道を通って来てるんだね。
  竜理長結成のいきさつ
そんな三人がなぜ一緒に竜理長を結成することになったのですか?



僕と竜ちゃんは一緒に特撮をやっていて、長谷川さんとは筋肉少女帯で一緒にやっていて、
三人が一緒に音を出したのは大槻ケンヂ20thバンドですね。
そのバンドでは竜ちゃんがバンマス(バンドのリーダー)だったんです。

ギターは竜ちゃんとNUOVO IMMIGRATOで一緒の、バーニー(日下部“Burny”正則)さんですよね。
  NUOVO IMMIGRATO / UNDERWATER
※「Sweets」収録












そうです。それでこのバンドいいね!ってハナシになって。
20thバンドはやがて、オーケン(大槻ケンヂ)が51歳になったときにバンド名を51stバンドに変えたのだけれど、
メンバーは同じです。
その後、僕がソロアルバム『AKEBONO』を制作中に竜ちゃんにベースと口笛で参加してもらったら、
竜ちゃんが「どうせだったら、レコ発ライブをしましょうよ!」と言ってくれて。
それでレコ発&竜ちゃんのバースデーライブをやりたい!って長谷川さんを誘ったらOKしてもらえたのが始まりです。
バンド名の竜理長は、みんなの名前から一文字ずつとって、
さらに竜ちゃんは料理が得意でブログでも写真を載せているくらいだから、
料理長をモジっている感じでいいかな、と決めました。
竜理長2回目となる9月のライブ前に、
6月21日の「オーケン、うっちー、エディーのメジャーデビュー29年記念日SESSION」でも
竜理長のコーナーを作ってもらって「RTB」と「サンフランシスコ」の2曲を演奏しました。
 
ここで3人のお互いの印象をお聞きしたいのですが。
初めて会ったときは、三柴さんは見た目が怖かった(笑)。
筋肉少女帯のリハーサルのときだよね。


筋少のPVかなんかで、三柴さんのピアノってすごい!
って思っていたんだけれど、特に調べたりはしてなかったな。



で、「怖くないよ」って言ったら、すぐ慣れちゃって「セッションやらない?」って誘われて。
それから筋少のレコーディングやライブとは別に、Rolandのイベントのときにデモ演奏をすることになって、
二人でセッションしました。
それで長谷川さんの三柴さんへの印象はどう変わりましたか?
この人すごい!って思って、好きになったし、今はなるべくしてこうなったという感じです。
竜ちゃんと長谷川さんは?
あるギタリストがバンドメンバーを募集しているときに一緒に合わせたことがあるんですよね。
そうそう、そのときはヘヴィー・メタルですよ。


ホントにうまい人だな~と思いました。20年以上前ですね。
その後、ベーシストの和佐田達彦さんの企画のライブでお互い違うバンドで参加した時に再会しました。
それで、竜理長でやってみてどうでした?




お互い年齢も重ねて、音楽的な経験も重ねて、いろんなジャンルのことができるようになって集まっているので、
それぞれがものすごい多くの引き出しを持っているんですよね。
だからどんな曲にも対応できるし、またアレンジもできるし、「ああ、こう来るんだ!」っていう勘も働くんで
「そう来たらこう行こう」みたいな、自由度が無限な感じがするんですよ。だからすごくおもしろい。
長谷川さんをアルフィー、TM(T.M.Revolution)、筋少でしか知らない人はびっくりするんじゃないですか?


そうかもしれないけれど、僕は僕で個人の活動として、
いろんなライブハウスでいろんな人といろんな曲をやっているので。


長谷川さんというと、激しいドラムのイメージがある人が多いと思うのですが、こんなに表情豊かに、
静かな曲も叩ける人はなかなかいない。
うんうん。
今回の竜理長の録音では、ピアノトリオってこともあって、長谷川さんの細かいニュアンスまで全部聴こえる。
マスキングされてないんですねー。
長谷川さんを師と仰ぐ人はもちろん、ドラマーを目指す人には是非聴いて欲しいですよね。
ほんと、すごくちっちゃな音までちゃんと聴こえるし。


小さくても芯がある音を出すのは、とっても難しいんですよ。
僕が師と仰ぐ山木秀夫さんから学んだことで、すごく難しいけれど挑戦するのは楽しいんです。




本当にそうですよね。ピアノでも、大きなホールでマイクを使わずに小さな音を後ろのほうの客席まで届けるのには
技術がいりますから。
小さな音に限らす、どんな音になるかっていうのは、出す音にどんな思いを込めるかって気がするんですけど。
そういう意味で言えば、竜ちゃんの歌がすごく深くなったなあって思います、以前よりも。
いろいろ苦労したんでしょうねぇ(笑)。


切なさとかが出てて、僕はとっても嬉しいんだけど。
特撮で一緒にやっていたころは、元気ばっかりでてたのが、最近はちょっと抑えるところがあったりして。
そうですねぇ(笑)。
若い時ってそうだよね(笑)。いぶし銀っていうとナンだけど、そういう感じ?
自然にそうなったんでしょうね。
それで大人の音楽って感じになったんでしょうね。
   
  秘密のファースト・アルバム計画!?
今回のレコーディングはどういったいきさつがあったのですか?





もともと4月のライブをJIROKICHIのPA、桑原“WAO”和夫さんに(ライブの記録として)録音していただいていたのが、
とても良かったので、「このバンドなら、ライブ録音のCDができるかも」と考えていて、
6月のライブが終わったところで、長谷川さんに相談したら
「どうぞ!どうぞ!」と色よい返事をいただけたので、竜ちゃんと細かいことを決めていきました。
だから、楽曲の録音許諾とかは6月から申請を始めていたし、販売についてもBlastyさんにお願いしていました。
  AKEBONO / Satoshi Mishiba
※髙橋竜参加
  それから、ミックスや、マスタリングのことを長年お世話になっているエンジニアの有馬英之さんに相談しました。
彼は僕のアルバム『AKEBONO』やフレディー・マーキュリーのトリビュートアルバムとか、
いろいろ録音してくれています。
出会ったのは、ギタリストの横関敦さんのソロアルバムのときだったから、もう28年くらいのお付き合いです。
そんな有馬さんが、「だったら僕がライブハウスでの録音からやります!」と言って機材を持って来てくれて。
ほんといい音で録れた~。


ホントに!!でもライブ録音って、演奏は一発録りだし心配だったから、
マスタリングが終わるまでは秘密にしていたんです(笑)。
 
収録曲はどうやって決めたのですか?結成当時はカバー曲が多かったようですが。





CDを出すと決まったら、オリジナルを作りたくなったんですが、とにかく竜ちゃんのパワーがすごかった!
ベースやギターを弾きながら歌うだけでも大変なのに、どんどん新曲を増やしていって。
もともとオーケンの20th、51stバンドのライブでも、
オーケンのお休みタイムにバンドだけで演奏するコーナーがあったので、
こんな曲やろう!というとすぐカタチになっちゃうメンバーなんですよ。
そうそう。
うんうん。
竜ちゃんとしてはなんかやる気になっちゃったとか。


僕はSUZY CREAM CHEESEができなくなっちゃったので、そういうオリジナルを弾いたり、
歌ったりできるようになって嬉しいな~っと。そういう感じです。
   
  メンバー三人による楽曲解説
 
それではCD竜理長の収録楽曲についてきかせてください。
  01.「AZUR」作曲:髙橋竜






ライブレコーディングというと、機材トラブルとか演奏が納得いかないとかいう理由から、
予定していた楽曲の収録が難しい場合があるので、あらかじめ録音楽曲数を増やしておきたいと思ったんです。
もし9月のライブレコーディングが全部ダメだったとしても4月の録音にスタジオレコーディングをプラスすれば
1枚のCDができるくらいにね。
それでまずは、竜理長という3人のシェフがいるお店に入ってきた時のBGMみたいな音楽を作ろうということで
インストの楽曲を用意しようと相談していたら、竜ちゃんがフランス語で青という意味の「AZUR」を作ってきました。



ちょっとエリック・サティみたいなのを作ろうと思って、ピアノで録音して三柴さんに聴かせました。
以前伊豆の海でシュノーケルをした時に見た青い魚、ルリスズメダイの群れが綺麗だったので、
それをイメージした感じです。
ピアノで!?


竜ちゃんはピアノも上手いので、僕なりに弾いただけで大きく変えてはいませんよ。
ただ、ライブとはちょっと違った味付けにしたかったので、あえてピアノではなくて、僕はエレピで弾きました。


三柴さんの『AKEBONO』の「A Sleeping Dog」で弾いたときみたいに、僕はフレットレスベースを2本入れて、
ちょっと左右に分けて録音しています。
ヘッドフォンで聴くとビックリするよね。
途中のハーモニックスは、近寄るとルリスズメダイがあっちこっちに逃げるのを表現しました。
  02. 「サンフランシスコ」作詞:大槻ケンヂ 作曲:三柴江戸蔵







4月にライブをやろうということになったとき、
竜ちゃんが「筋少のサンフランシスコをボサノバにしたらどうでしょう?」と
デモテープを作ってくれたんです。ガットギターを弾きながら歌って。
僕は自分の曲なのにそんなこと考えたことなかったから、目からウロコだったんです。
ボサノババージョンの「サンフランシスコ」だからボ・サンフランシスコとか言ってたんですが、
実はこのバージョンでは曲中でオリジナルのように「サンフランシスコ!」とは叫んでいないんです。
でも、歌詞が描いている“お別れの雰囲気”みたいなさみしさがあって、すごく気に入っています。
竜ちゃんならではの発想ですね。
僕は客観的に曲をみれていないので、やはり竜ちゃんならではですね。
僕もすっごいおもしろいと思った。すっごいおもしろいんだけど、右足がツライ!
ドラムのことよくわからないんですが、どういう点が大変なんですか?








この曲では竜ちゃんがギターを弾いていて、ベースがいないの。
で、キックで(低音の)重みを出さないといけないんだけど、
ライブではビーターを他の曲のために、もっと速く踏めるようにセッティングしてあるから、高度な技術が要るんです。
例えばカナヅチで鉄板をガーンガーンって叩くはずのところを、そのおんなじ金槌と鉄板で「カカッ、カカッ」って、
そっと叩きなさいって言われるようなイメージなんですよ。
さらにその中でも抑揚をつけなければいけないし。やっぱりこの年齢じゃないとできないかな。
ボサノバも嫌いじゃないし、音楽全部好きなんで、ジャンルにこだわってもいないし。
知っている曲でボサノバができる楽しさやおもしろさがあるよね。
  03. 「INSOMNIA」作詞:川村かおり、さいとうみわこ 作曲:髙橋竜
これは、ずいぶん前に川村カオリちゃんに提供した曲なんですけど。
CDになっているんですよね。







『BEATA』っていうファンハウスから出ているアルバムです。
最初この曲は自分のバンドでライブでやっていたんです、英語の歌詞で。
途中の間奏のところはライブハウスのPAさんに、好きなセンスでダブにしてくださいって言ったりして。
それで川村カオリちゃんのアルバムに入るときに日本語の歌詞がついて、
ベースは根岸孝旨さん、ドラムはカースケ(河村"カースケ"智康)さんで録音して。
で、竜理長でもやってみようと。それで竜理長の色になりました。
ほかでは長谷川さんがレゲエをやっているのは見れないんじゃないかというのもあって。
でも長谷川さんって叩けちゃうんだよね。




やったことはあるんですよ!セッションでレゲエ調の曲とかね。セッションでやる人たちってすごいテクがあるので、
土着のレゲエじゃないけれど、やっぱりレゲエになるんですよ。そこでいろいろ鍛えられてはいるんで。
カオリちゃんはアルフィーと同じ事務所だったので知っていたし、若くして亡くなってしまったから、
ライブで(この曲を演奏したとき)は、ちょっときましたね。いろいろ思い出しちゃって。
詞が詞だけに胸に来ますよね。
すごい詞なんですよね。


川村さんは高校がオーケンと一緒なんだよね。年齢が違うから同時期ではないけれど。
そうそう、僕が初めてレゲエっぽいのをやったのは特撮の「文豪ボースカ」だよ。
ああ、あれはレゲエの部分がありますね。
ピアノで人力で、ダブをやったんだけど、エンジニアに頼らないでね(笑)。今回もやったよ。
  04. 「KOZY CAFE」作曲:長谷川浩二
三柴さんに曲書いてって言われて。しかもタイトル決まってて(笑)。コードがCAFEで作ればいいじゃない!って。
そのコード使ってね。


アルバム作るから、長谷川さんの曲も入れたいから新たに作って欲しいって。
三柴さんに言われたら、「はい!」ってね。
一応、怖い人だから?(笑)
「わかりました~。人生かけて頑張ります!」ってことで(笑)。




長谷川さんは忙しい人だから、僕と竜ちゃんで手伝うつもりだったの。おこがましくも(笑)。
そしたら長谷川さん、ホントにちゃんと作ってきてくれて。
もう、メロディーからコードからちゃんと作ってあったから、ほとんどアレンジする必要もなかったの。
すごく嬉しかった。
ただ、イメージしている音がギターで弾ききれないところもあって、そういうところとかを二人に広げてもらいました。


その広げかたとかもきちんとイメージしてあって、構成とかもここに一小節入れてとか、
ここはベースでメロを弾いてとか、ちゃんと考えてあったの。
ギターで作曲したんですか?
そう、ギターでね。
メロもコードも弾いてくれて。
デモテープはどうやって作ったんですか?
いや、全部譜面で。ギターを弾きながら、メロとかコードを書いておいて、あとは弾いて説明したんです。
長谷川さんの曲は全部聴いているけど、ホントにいい曲ばかりでハズレがないんだよね。


長谷川さんのドラムは隙が無くて、情報量が多いじゃないですか。
でも作る曲は隙間があって、その“間”がいいんですよ。
“間”も音楽だから。大事ですよね。
きれいな曲ですよね。
最近の音楽は音が埋め尽くされていますよね。
長谷川浩二というとドコタカドコタカっていうイメージですけど、本来そうじゃない。


サンダー・ユー(Thunder You Poison Viper)でも長谷川さんの曲をやっていますよね。
ライブで聴いたときに素敵な曲だな~っと思ったんですけど。
  you!/ Thunder You Poison Viper
※「Politician」「LIFE」収録
あれはもともと長谷川さんが参加しているバンドExhiVisionTOSHIMI PROJECTにも入っている曲ですよね。
  Beyond The Earthbound / ExhiVision
※「Politician」収録
  SO / TOSHIMI PROJECT
※「SO」収録




ヘヴィーなのも数曲ありますけどね。
ただ、竜理長の曲なので竜ちゃんと三柴さんが弾くからっと思って、ああなりました。
ドンピシャ!なピアノとベースで、作曲者としてはこれを超える「KOZY CAFE」は無い!と思っています。
ふたりを想像して書いているので。
嬉しいですね。
  05. 「ジャカルタ行き836便」作詞:髙橋竜 作曲:あっぱれトヨひろ







この曲は作曲があっぱれトヨひろさんで、詞が竜ちゃんです。
あっぱれトヨひろさんは学生時代に僕と新東京正義乃士というバンドをやっていた人なんです。
当時のこの人の作詞・作曲による「死体のこもれ火」という曲は、
オーケンの電車というバンドが演奏、録音しています。
あっぱれトヨひろさんは今でも新曲ができると僕に送ってくれて、その中の一曲を竜ちゃんに聴かせたら、
「これやりましょう!詞をのせますよ」と言ってもらえて。
それで竜ちゃんが詞を書いたのが「ジャカルタ行き836便」です。
  0'年代の電車 3TITLES / 電車
※「死体のこもれ火」収録
じゃあこれは新東京正義乃士で活動していた当時のではなくて、新しい曲なんですね?
そう、新曲です。それでもう、竜理長オリジナルとして、できるねって。
歌詞のことを竜ちゃんに訊きたいんですが。







はい、ジャカルタへは行ったこともないし、インドネシア人の友達もいないんですけど、
以前渡り廊下走り隊に曲を作ったことがあって、
そのメンバーの一人がJKT48(ジャカルタ・フォーティーエイト)っていうのに入って。
日本で生まれ育った人なのに、そのあとずっとそのJKT48の主力メンバーになって、
今やインドネシア語もペラペラで大活躍しているっていうのを聞いて「すごいな!そんな人生もあるのか」っていうのが
頭のどこかにあったんでしょうね。歌詞を作るときに、それじゃ“ジャカルタ”にしようっと思って。
僕自身はジャカルタには縁がないんですけど(笑)。



なんか切ない歌詞だよね。そういえば竜ちゃんはイントロと間奏、あと終わりのところで、
インドネシアの民族音楽のガムランの音階を取り入れてアレンジしているんです。
普段、弾き慣れない音階なので難しかったけど、詞に合ったアレンジで、とても面白いな~と思いました。




曲の雰囲気から、アレンジするときに80年代っぽくしようと思っていたんです。
それで、長谷川さんにドッ、ドッ、ドッタカタンという当時のリズムパターンを叩いてもらいました。
(SONYの)38マイクで大滝詠一さんが録音しているような、
ナイアガラ・トライアングルみたいのをイメージしています。
  06. 「ALL YOU PEOPLE」作詞・作曲:髙橋竜
この曲を竜理長でやろうと思ったきっかけは?
これは詞・曲とも竜ちゃんので、いい曲だなぁ~っと思ったので。





もともとSUZY CREAM CHEESEの3rdアルバムに入っていたんですけど、
小川文明さんと二人で、スタジオにあるRhodes Pianoが良い音だったので歌と一緒に録ったんです。
文明さんの追悼の意味も含めて、ここでもやろうと。
スージーのバージョンはピアノ(Rhodes)と歌だけだったんですけど、
今回は長谷川さんにも叩いてもらって、という感じです。
  Suzy Cream Cheese vol.3 / Suzy Cream Cheese
※「All You People」収録



やっぱり文明さんのプレイは味があって、それにはかなわないので僕なりにどうアレンジしようかと。
それを竜ちゃんが許してくれたので。それだったら長谷川さんも途中から入ってこない?ってことで。
スージーのバージョンではドラムの佐藤強一さんは入ってないんですけど。三人のアレンジでやりました。

やってみたら、長谷川さんが「こんなにハネちゃっていいの?」って言ってました(笑)。「大丈夫!」って言いました。
小川文明さんと三柴理さんのプレイ違いを教えてください。
文明さんはアメリカの土着的な要素が好きなので、この曲でもそういった装飾音を入れているんですね。




僕はルーツがどちらかというとアメリカよりヨーロッパなんですよね。
今回はRhodesではなくて、グランドピアノということもありますし、
何より文明さんはボーカルでもキーボードでも、あったかい、歌心のあるプレイをするので、
それにちょっとでも近づけるように頑張りました。
三柴さんバージョンということで、それもよかったですよ。


今回は文明さんに背中を押された気がするね。ライブ中も「竜ちゃん頑張れ!」って。
竜ちゃんの歌にも、文明さん的なあったかさが宿っていた気がしました。
文明さんは、筋少とも対バンしましたよね。



すかんちですね。文明さんは筋少の「おもちゃやめぐり」という曲のレコーディングでもシンセブラスを弾いています。
あと僕はVOXVOXというオルガン・ユニットを文明さんとやってました。
スージーのライブの前座をしたり、僕がスージーに飛び入りしたりしていましたね。
  07. 「ヤンガリー」作詞:大槻ケンヂ 作曲:ザ蟹
「ヤンガリー!ヤンガリー!」って頑張って叫びました。
すごくよく聞こえるよね。最後の最後まで長谷川さんは叫んでる。
叩いてる姿を見てると、怖くて声も低いんじゃないかと思われるんだけど、怖くないし、声は高いの(笑)。
しかも難しいドラムを叩きながら(笑)。
ドラミングも毎回やるたびに毎回違うし。
竜ちゃんの楽しいMCとコーラスも今回のアルバムには収録されていますよ。
ちょっと変わった曲ですよね。
もともとはザ蟹の曲で、インストなんです。
  TAG / 三柴理Electric Trio
※「ヤンガリー~Instrumental Version」収録
  僕とベースの塩野さんの共作で、『戦闘妖精雪風』のBGMを制作しているときに、
特撮の曲募集があって出した曲です。どうやって歌うの?みたいな曲ですね。
オーケンも当時、不思議な曲だって言ってましたよ。
  Agitator / 特撮
※「ヤンガリー」収録
  08. 「SWEETS」作詞:大槻ケンヂ 作曲:髙橋竜
これは竜ちゃんの大名曲ですよね。歌詞を書いたオーケンもすごく気に入っていて。初出は特撮ですね。
  オムライザー / 特撮
※「SWEETS」収録


この曲はいろんな人たちが歌ったり演奏したりしているけれど、
今回のバージョンは「SWEETS」史上最も熱い演奏なんじゃないかな。
  ミッドナイト・プラグレス・カフェ / 大槻ケンヂ
髙橋竜がコーラスで参加した「SWEETS」収録





基本やり逃げなんで(笑)。
っていうか、毎日毎日いろんなところで、いろんな人たちといろんな曲をやるじゃないですか。
なので、引きずっていたら次に入れないんですよ。その場のメンツとその場の空気とその場の演奏を楽しみたい。
あとはその場にいらしているお客様のためにやるものだと思っているので。
だから「良かったな」ってことしか覚えてないんだけど。


こういう長谷川さんみたいな上手い人っていうのは、たいてい自分のことしか考えてない自己満足の人が多いのね。
だけど長谷川さんはいつも、お客様を意識して演奏している。そこが素晴らしいところ。
それが、自分の自己満足なの。
なるほど。
  09. 「RTB~戦闘妖精雪風ED」作詞:多田由美、横山武 作曲:三柴理、Clara




僕が、ザ蟹THE金鶴でかかわった『戦闘妖精雪風』というオリジナルビデオアニメーションのエンディングテーマで、
ムッシュかまやつさんが歌っているんです。この曲は結構人気で今もカラオケでよく歌われています。
でもCDが入手困難になってしまって。
今年かまやつさんが逝ってしまったこともありトリビュートとして、竜ちゃんにリメイクしてもらおうかと思いまして。
いやあ今回、この歌も含めてアルバム全体から竜ちゃんフェロモンが出てますね。



ホント。変にかっこつけてなくて、好感が持てて何回も聴けちゃうんですよ。
声から気持ちのいい周波数が出ているのかなぁ。
そういえば、この曲を含め、雪風が縁となって原作者の神林長平先生のイベントにも参加できたんですよ。
  戦闘妖精雪風 Blu-ray Disc Box (スタンダード版)
  戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)
  グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)
  10. 「夜もがく」作詞・作曲:髙橋竜
竜ちゃんの歌、って英語の詞でも全く違和感がないですよね。
うーん。
日本人が歌う英語の歌詞ってちょっと恥ずかしい感じがするんだけど、そういうのがまったくなくて。
うーん。
ホントに「夜もがく」って、素晴らしい楽曲だなぁと思って。英語もさることながら、演奏もすごいので。
うーん。



ふつう知らない曲ってお客さんポカーンってしてることが多いんだけれど、
この曲は9月のライブで初めて演奏したのに大盛り上がりでした。
音楽の力だけでこんなに人の心を惹きつけられるって、すごいなぁって思いました。
YouTubeでもライブの模様を公開してますね。
この曲は竜ちゃんのデモテープの時点から興奮しました。
 
最初はベース弾き語りで聴いてもらって。それから一緒に音を出してその後サビを作りました。



そうそう、どんどん良くなっていって。
竜ちゃんは僕のピアノ練習用にマイナスワンテープ(ピアノのパートだけ抜いたデモテープ)を作ってくれるんだけど、
それに合わせて毎日ノリノリで練習してました。


デモテープ作成中に、「KOZY CAFE」を作るので3人で集まっていたとき、
長谷川さんがスティーブ・ガッドが好きと言っていたので、じゃあジャズっぽくしてもいいかなぁと思って。


長谷川さんがかっこいいフレーズを叩いてくれたので、僕もいろんな引き出しがでてきちゃいました。
そんなこともあって、このバンドをやり始めてから楽しくてしょうがないって感じですね。
うんうん。
それがお客さんにも伝わっている感じですね。
音楽をちゃんと聴いてくださるお客さんが多いんですよね。
嬉しいですね。
  11. 「月灯」作詞:Clara、髙橋竜 作曲:Clara
 



これはライブで2バージョンやって、バンドバージョンでは竜ちゃんの長いベースソロやピアニカソロもあったんですよ。
でもこのアルバムには竜ちゃんのギター弾き語りバージョンを入れました。
アルバムを聴いているひとのために、傍らで竜ちゃんが歌ってくれてる、みたいな雰囲気を出したかったので。
そんなイメージはすごく感じました。
とにかく激しい「夜もがく」が終わったあとの、ほっとするナンバーです。
口笛も入ってますね。
僕のアルバム『AKEBONO』の「Lone Wolf」という曲でも、竜ちゃんが口笛を吹いているんです。
なんか心地いいです。竜ちゃん大活躍ですね。


ガットギターで弾き語りって、桑名晴子さんと一緒にお仕事をしていたときによく晴子さんの弾き語りを見ていたので、
そんな影響もあります。
  Bonus Track
12. 「デュークとボルシチ」作曲:三柴理、Clara




僕のソロアルバムに入っている曲で、4月のライブでやったテイクなんです。
このときは、竜ちゃんのバースデー&『AKEBONO』発売記念ライブってこともあって、
竜ちゃんがフレットレスベースでメロディを弾いたり、長谷川さんのドラムが入ったりしている竜理長バージョンですよ。
多少ノイズが入っているのですが、あまりにも演奏が良かったのでボーナストラックとして入れました。
長谷川さんが入って、ひろがったよね。
この三人だとひろがり無限大だよね。
  Bonus Track
13. 「あの娘が遊びに来る前に」作詞:大槻ケンヂ 作曲:髙橋竜
これも4月のテイクです。
もともと特撮の曲ですよね。
『初めての特撮』というアルバムだなぁ。
ベスト盤ですね。
  初めての特撮 / 特撮
※「あの娘が遊びに来る前に」収録




でも録音したのはもっとずっと前なんです。『Agitator』だったかな。
そのとき収録されなくて、ベスト盤に入ったんです。
この、特撮のときと違って、僕はガットギターを弾いてます。
長谷川さんのドラムのおかげでベースがいなくても成り立つんですよ。
ほんと、ベースレスな感じがしないですね。
三柴さんの左手(低音部)もちゃんと入ってますしね。
   
  竜理長よもやま話
 
長谷川さん的に、このアルバムで特にオススメの曲ってありますか?
全部!
すごいですね。


楽曲が求めてくるドラミングと二人の息遣いと、その場の雰囲気でドラミングが変わってくるので、
特にこの曲というより全部なんですよね。
今回のジャケットにも使われている、Timonさんのイラストについてはいかがですか?










かわいいって評判です!
長谷川さんがやっているTAGAWAというバンドの物販でTimonさんのイラストを見て、
これはかわいいって思ったんです。
最初のライブのときからTimonさんに三人のイメージと楽器パートが伝わるイラストをお願いしていました。
今回アルバムをリリースするにあたっては、オリジナル曲もあるし、
カバー曲もおいしく料理する三人っていうイメージがあって。
オモテのイラストは、三人のシェフがお料理をしているんですけど、
竜ちゃんがピザを焼いていて、僕が音符型のステーキを差し出しているフランス料理シェフみたいな。
そして長谷川さんはラーメンの湯切りをしている、なんてアイディアは、長谷川さんなんですよね。
メンバーの肌色とか衣装の色とか細かい点も的確に指示をしてくれたんです。
まだイラストの仕事を始めたばかりの若手だからね。
その分、初々しさがあって勢いを感じますよね。竜理長もバンドとしては、生まれたばかりだから。
あのイラストは竜理長のアルバムイメージにすごく貢献していますよね。
ホント、貢献してますよね。
今後の竜理長は?
次は2018年1月13日に高円寺JIROKICHIでライブをやります。このバンドはやりがいありますね。
まだまだセルフカバーしたい曲もあるし、オリジナルもどんどんできそうだしね。






そうだね~。僕はドラムっていうポジションはある意味指揮者だと思っているの。
曲を生かすも殺すもドラマー次第って感じ?
例えば抑揚も曲調にあったものをつけるべきだと思うし。
そもそもお金を払っているお客様のためにやっているし、
観に来て良かったと楽しんでもらえるように演奏するのがスジというか、
当たり前だといつも思っているのが基本にあるから、このメンバーとやっているのは楽しいな。
 
それは伝わってきました。三人しかいないから、隙間ができたりして、いろいろな試みがあるのがいいなっと。
いろんなことやいろんなジャンルができるし。



「夜もがく」とか、初めて演奏した曲なのに、お客様が熱く反応してくれて、
そんなとき音楽で人を惹きつけられるっていいなって思いました。
言葉で先入観を植え付けるとかじゃなくてね。このバンドはそれができると思う。
長谷川さんはいろいろ活動されていますが、これから竜理長も続けていきたいですか?



もちろん!続けていきたいし、いろんなバンドで地方に行ったときは、
生ピアノのあるライブハウスをチェックしてますよ。
でも、この人、旅嫌いだから…(笑)。
ふふっ(笑)。
この三人だったらツアーも楽しそうですね。
うん、楽しいと思う!
  (2017年11月1日 竜理長ファースト・アルバム発売によせて)
 
  インタビュアー:大串義史
筋肉少女帯のライブをメジャーデビュー以前から体験。三柴理の『PianismⅡ』『THE金鶴』『Freddie Mercury Tribute「LOVE OF MY LIFE」』『Pianism of King-Show』、そして今回の『竜理長』のCDデザインを担当。